第90回死亡した配偶者の親を介護していた場合の相続権放送日:2020.01.23
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預貯金の払戻し制度の創設 2019年7月1日
登場人物:父(死亡)、母(死亡)、長男(死亡)、次男、長男の妻(質問者)
財産内訳:自宅(3000万円)、預貯金(2000万円)
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- Q.
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先日、亡き夫の両親が亡くなりました。夫の弟が疎遠なため、約5年間私が両親の介護を行っていました。私に相続する権利はないのでしょうか。遺言書はありません。
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- A.(改正前)
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被相続人が死亡した場合、相続人(次男)は、被相続人の介護を全く行っていなかったとしても、相続財産を取得することができます。
他方、長男の妻はどんなに被相続人の介護に尽くしても、相続人ではないため、被相続人の死亡に際して相続採算の分与にあずかれません。
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- A.(改正後)
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相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護をしたり、被相続人の財産の維持・増加について特別の寄与をした等の場合には,相続人に対して金銭の請求をすることができる(改正民法1050条)こととしました。
ここでいう親族とは、被相続人の配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族をいい、子の配偶者(上記の例の長男の妻)はこれに含まれます。
そして、遺産分割の手続が過度に複雑にならないように,遺産分割は,現行法と同様,相続人だけで行うこととしつつ,相続人に対する特別寄与としての金銭請求を認めることとしたものです。これによって、相続人でない親族も特別寄与者として相続財産の分配にあずかることができることにはなったのですが、ではどの程度なら「特別の寄与」で、その価値はいくら、というのは現行法上の寄与分においてもよく争いになるところです。
また、何の証拠もなしでいきなり特別の寄与を請求しても、現場をよほど熟知している、あるいは相続人たちと親しいのでない限り、認められるのは困難です。そのため、日付のある療養介護等の記録(介護日記など)、療養介護等に使った経費のレシートなどを記録しておくことが必要です。
また、被相続人の生前から相続人たちと被相続人の状況や介護などについて情報共有しておくとよいでしょう。