第336回事例をもとに学ぶ生前対策:前妻は法定相続人にはあたりませんが、前妻との子は法定相続人です。遺留分に配慮しましょう。放送日:2024.9.19
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- 【事例】
- 最近、知人から「相続で揉めている」という話を聞いて、家族のために遺言書を書き始めたAさん。Aさんの相続人は、妻と子、そして前妻との子、の3人です。Aさんと前妻は険悪な関係で前妻の子とも会わせてもらえない状況。そのため、Aさんは「今の妻」と「今の妻との子」に財産を残す、と遺言書を書きました。遺言書は書いたものの、自分の亡き後に妻と前妻の間で何かもめ事が起きないか心配です。
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- 【解説】
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整理すると、
Aさんの法定相続人は、妻、今の妻との子、前妻との子
しかし、Aさんは妻、今の妻との子に相続したいと思っている、ということですね。
Aさんの考えるとおり、離婚すると前妻は相続権を失うが、子どもには相続権があります。相続人と相続分の割合は民法で定められていて、これを「法定相続人」「法定相続分」といいます。
まず、今の妻と子どもに財産を残すために遺言書を書くことは有効な手段と言えます。遺言書があると、遺言に書かれてある部分については相続手続きがその通りに実行されます。ご相談者様が今の配偶者と子どもに財産を残す内容の遺言書を作成すれば、今の配偶者と子どもを守ることができます。
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- 【遺留分に気を付ける】
- ただ、遺言で相続人や相続割合を決めたとしても、配偶者と子や孫、両親や祖父母には最低限の遺産をもらう遺留分という権利があります。つまり、「前妻との子」には遺留分がありますから、遺留分侵害額請求権を主張してくる可能性が充分にあります。対策としては「遺言書であらかじめ前妻の子どもにも遺留分額の財産を渡す内容を記載しておく」「今の配偶者と子どもが前妻の子どもから遺留分を請求された時に渡せるように遺留分と同額の現金を用意しておく」といったことが考えられます。
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- 【遺留分とは】
- 遺留分は一定範囲の相続人に認められた最低限度の遺産取得割合です。本来の法定相続分の半分以下しか財産を取得できない場合、遺留分を持つ相続人は遺留分侵害額請求権を主張することができます。遺言よりも強い効力を持っているので、主張すれば必ずその分の財産を取得することができます。