第333回事例をもとに学ぶ「法定相続人以外への相続」:法定相続人以外へ相続したい場合、遺言書の作成が必須となります。また、遺言をスムーズに実行するために、遺言書に遺言執行者を指定しておくことを、あわせておすすめします。放送日:2024.8.29

  • 【事例】
    独身で一人暮らし、今年で70歳になるAさんには妹がいます。妹夫婦とは仲が良く、特に姪っ子をかわいがってきました。最近、病気をしたことをきっかけに「終活」について考えるようになったAさんは財産を姪に渡したいと考えています。Aさんの両親は既に他界しており、法定相続人は妹だけです。どうすればいいでしょうか。
  • 【解説】
    ◆ポイント1:元気なうちに終活を始めることで、今後の備えに
    一人暮らしの御高齢の方にとって、元気なうちに終活を始めることは、今後の安心につながります。「もしもの場合」への希望がある場合は、そのための手立てを具体的に、そして早めに準備しておくことが大切です。
    ◆ポイント2:遺言書の作成と、あわせて遺言執行者を指定しておく
    Aさんの場合、もし何も準備をしないまま亡くなったときは、法定相続人である妹が財産を相続することになります。そのため姪に財産を渡すには、遺言書にその意思を書く必要があります。通常、遺言書を残す場合は法定相続人の遺留分に配慮した方が良いのですが、兄弟姉妹に遺留分はありません。その点では、安心して姪にすべての財産を渡すことができます。
    ただ法的な権利と人の感情は別問題です。そこで遺言をスムーズに実行するために、遺言書に遺言執行者を指定しておくことを、あわせておすすめします。
    ◆ポイント3:任意後見契約を行い「もしもの場合」に備える
    相談者様が心配しておられる「もしもの場合」には、認知症になったり病気やケガで入院したりといった場合のさまざまな手続きや財産管理、死後の事務手続きが含まれていると思います。これらのことには、遺言書の作成だけでは対応できません。そのため相談者様が元気なうちに、姪と任意後見契約をすることも御検討ください。 法定相続人以外に、財産を渡したい、という場合、遺言書と任意後見契約書の作成をおすすめします。 しかし、その内容にはさまざまな検討事項があります。お早めに、専門家に相談された方が安心です。 *法定後見とは 判断力が低下した人の法的権利を守る制度 法定後見による保護を受けるには、家庭裁判所に後見人等の選任の申立てをします。 その申立てにより家庭裁判所の審判が確定し、家庭裁判所が後見人等を選任したら、法定後見が開始します。そして特別の事情がない限り、本人が死亡するまで続きます。 後見人等は、本人の利益になることのみに、その権限を使います。したがって、相続税対策を目的とした生前贈与や、遺産の放棄といった本人の財産が失われかねない積極的な資産運用はできません。
  • *任意後見とは 判断力が十分あるうちに後見契約を結ぶ制度
    任意後見は、本人の判断能力が十分なうちに、将来的に任意後見人になる人との間で、公正証書で任意後見契約を締結するところから始まります。やがて本人の判断能力が低下し、任意後見人の後見事務を監督する「任意後見監督人」が選任されたら、任意後見がスタートします。つまり任意後見契約は、将来、判断能力が低下したときの備えとして結ぶ契約です。