第322回贈与税制の改正により、贈与する相手によって暦年課税制度、相続時課税制度、などをうまく活用し選択することが、税務上は効果的です。放送日:2024.6.13

  • 【質問】
    今年から、贈与税制が改正されたと聞きました。
    これまで贈与をして、節税対策を講じてきましたが見直した方が良いのでしょうか。
  • 【解説】
    安易に従来通りの方法で贈与するのは危険です。
    意図した効果が得られないばかりか、かえって逆効果になる可能性すらあるからです。
    各ご家庭の状況によって活用方法は異なりますから、まずは、改正のポイントから見ていきましょう。
  • ・暦年課税制度
    従来、被相続人から本制度を使って生前に贈与された財産のうち相続開始前3年以内のものについては、相続財産に加算して相続税を算出することになっていました。これが、令和6年1月1日以後の贈与分から、加算期間が7年に延びます。
  • ・相続時精算課税制度
    従来、被相続人から生前に贈与された財産のうち本制度の適用を受けたものは、全て相続財産に加算して相続税を算出することになっていました。これが、令和6月1月1日以後の贈与分からは、暦年課税と似たような年間110万円の基礎控除枠が新設されます。この110万円以下の贈与部分については、贈与税非課税となるとともに、相続税の算出において相続財産への加算も不要です。

    改正内容から分かる通り、暦年課税制度は加算期間が3年から7年に延びることにより、節税効果が低くなったといえます。この生前贈与加算を受けるのは、「相続又は遺贈により財産を取得した者」です。つまり、通常は法定相続人です。したがって、法定相続人への暦年贈与はやりづらくなったということです。「相続又は遺贈により財産を取得した者」以外に対しては、これまで同様に生前贈与加算はありませんので、贈与した瞬間に節税効果が得られます。代表的なのは孫への贈与です。

    また、相続時精算課税制度の適用を受ければ、110万円以下の贈与部分は、贈与した瞬間に節税効果を得られることになります。

    このことから、今後は贈与する相手によってどちらを使うのかを選択することが、税務上は効果的だといえそうです。

    状況に合わせて、他の様々な特例とどう組み合わせて活用するのかなども検討が必要です。
    失敗しないためには、専門家への相談をおすすめいたします。