第305回【事例をもとに学ぶ相続】介護した分を遺産に上乗せする「寄与分」が認められることもあります。放送日:2024.2.15

  • 【事例】
    Aさんは長年父の介護を続けてきました。しかし、先日その父が他界。
    相続人はAさんと、妹のBさんです。
    Bさんは実家を離れて暮らし疎遠になっていて、Aさんはずっと一人で介護をしてきました。
    Aさんは、介護をしてきたぶん、Bさんより多く相続したいと考えていますが、Bさんより多く相続することは可能なのでしょうか。

    *法定相続分は2分の1ずつ
  • 【解説】寄与分が認められれば、可能。
    • ◆寄与分について
      遺産相続の場面での公平性を保つために設けられた制度「寄与分」は、昭和55年に導入されたものです。
      寄与分は被相続人の財産の維持や増加に貢献した法定相続人にのみ認められるもので、財産の維持や増加に関係ない場合や、法定相続人ではない人の場合は、どれだけ頑張っても寄与分は認められません。
    • ◆寄与分とは
      相続人のうち、被相続人の財産の維持または増加に貢献した相続人には、その貢献の度合いに応じた金額を、法定相続分にプラスしてもらうことができます。そのプラスされる金額のことを「寄与分」といいます。そして、寄与分をもらえるほどに貢献してきた相続人のことを「寄与者」といいます。では、どういった場合に寄与分をプラスしてもらうことができるのでしょうか。

      「被相続人の財産の維持または増加に貢献」ということですから、たとえば、事業を行っていた被相続人の事業を無給で手伝っていた、事業資金を提供していた、被相続人の入院治療費を負担していたといったことがそれにあたります。
    • ◆介護をしていればもらえる?
      寄与分は、相続人の間で発生する不公平感に配慮して定められたものですが、「介護をしていた」というだけでは、残念ながら寄与分が認められません。どれだけ被相続人のことを思って、一生懸命になって介護をしていても、それは同じことです。ただし、相続人が介護していたために、高額なサービスの利用やヘルパーの雇用をする必要が無く、結果的に被相続人の財産を維持することができたといったような場合ですと、寄与分が認められることもあります。また、被相続人が遺言書の中に「介護をしてくれた○○には他の相続人より○○○円多く相続させる」といったような記述を残していれば、寄与分ではありませんが、遺言書通りの金額や財産を相続することができます(ただし遺留分には注意)。
    • ◆寄与分はどうやって決める?
      民法では寄与分という仕組みがあるものの、寄与分を算定する方法についてまでは定められていません。寄与分の算定については、相続人全員が協議して決定することになります。

      万が一、協議が上手くいかないときは、家庭裁判所に申し立てをして、寄与分を決めてもらいます。
  • <参考>
    【寄与分が認められる要件】
    • ・寄与行為が相続開始前であること
    • ・その寄与行為が被相続人にとって必要不可欠だったこと
    • ・特別な貢献であること
    • ・被相続人から対価を受け取っていないこと
    • ・寄与行為が一定期間以上であること
    • ・片手間ではなくかなりの負担があったこと
    • ・寄与行為と被相続人の財産の維持・増加に因果関係があること

    • 寄与分の額:貢献度合いにより全く異なるが、判例で多いのは数百万円~1,000万円
  • 【寄与分が認められるのが難しい理由】
    要件を満たすのが難しいうえ、十分な証拠が残っていないケースが多く、他の相続人や裁判官を納得させることが難しいため