第291回【事例でみる相続対策】配偶者に、家と老後資金を遺したい場合「配偶者居住権」を活用しましょう。放送日:2023.11.16
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- 【事例】
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Aさんは長年勤めた商社を最近定年退職。時間ができたので相続について考えはじめました。
相続財産として思い浮かぶのは、持ち家、預貯金で、相続人はAさんの妻、長男、次男、長女の4名です。
Aさんの願いは、「妻には自宅に住み続けてもらうこと」「残りの財産をこどもたち3人でわけること」。そのために、妻には自宅を相続し、預貯金をこどもたち3名で平等に分けるように、という遺言を書くことにしました。
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- 【事例内容のおさらい】
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絹川先生:定年退職された、ということはAさんは60代でしょうか、定年を機に相続について考えるというのはとても良いタイミングですね。
大木さん:自分の死んだあとのことを考えるのは、確かに億劫なものですよね。
絹川先生:そうですね、相続について考えなければと思っていても、何も手を付けていない、という人の方が多いのが現状です。Aさんのように、はやくから対策を講じることで、より円満な相続をかなえられるでしょう。
さて、今回のケースでは「妻に家を」「子供たちに預貯金を」という相続計画をお考えということですね。
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- 【大木さんからの質問】
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大木さん:「妻に自宅に住み続けてほしい」という場合に、確か「配偶者居住権」が使えましたよね。
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- 【絹川先生からの「相続対策」解説】
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絹川先生:大木さん、さすがですね!先月も出てきた「配偶者居住権」を今回のケースでも活用すると良いでしょう。配偶者居住権とは、夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者が、亡くなった人が所有していた建物に、亡くなるまで又は一定の期間、無償で居住することができる権利のこと。
実は、今回Aさんが考えたように「妻に自宅を相続して」「残りの財産は子供でわける」と、ある問題が起こります。
絹川先生:奥様に現金を遺せなくなるので、老後の資金が不足する可能性があります。
しかし、配偶者居住権を使用すれば「自宅に住む権利」と「預貯金」を相続することもできるでしょう。
また配偶者居住権を活用するか否かに関わらず、まずは相続人間で話し合うことが大切です。
たとえば、Aさんは自宅に住み続けてほしい、と思っても奥さまがどう考えているかは、話し合わないとわからないでしょう。
大木さん:たしかに、奥さまと子供たち全員で話し合い各々の希望を話し合うことが「円満な相続」につながりそうですね。
絹川先生:そうですね、各相続人のライフプランを考慮して家族で話し合いながら遺言書を作成することをお勧めします。