第287回【相続の事例から考える】相続財産のほとんどが不動産:遺言書がない場合、遺産分割協議といって相続人全員の話し合いで決める必要があります。放送日:2023.10.19
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- 【リスナーからの相談】
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先日父が亡くなり、相続がはじまったCさん。
相続人はCさんと兄の2名のみ。
相続財産は何があるか、と調べはじめたところ財産はほとんどが不動産であることが判明。
公平に分けようと話し合いを進めますが、なかなか折り合いがつきません。
相続財産が不動産ばかりの場合、やはり売却して現金化するしかないのでしょうか。
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- 【質問内容のおさらいと回答】
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絹川先生:おそらく、今回のケースでは遺言書がなく遺産分割協議で話し合うしかなかったのでしょう。
大木さん:遺言書があれば、未然に防ぐことのできたもめ事ですね…
相続がはじまってから、相続人間で不動産を分け合う場合、どのような方法が考えられますか?
絹川先生:1つは、Cさんの言うように売却することです。これを「換価分割」といいます。
大木さん:たしかに、現金化して分けるのが最もシンプルで公平と言えますね。
絹川先生:そうですね。大木さん、不動産の相続方法には大きくわけて3つあったのを覚えていますか?
大木さん:代償分割、換価分割、共有分割
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絹川先生:
- ■代償分割
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兄弟のうち誰かが相続し、他の兄弟に現金などを渡す方法です。
もちろん、この方法は不動産を相続する者にそれだけの支払い能力があることが前提ですので、
どうしても不動産を守るためにこの方法をとる場合は相続人自身の他の財産を処分する必要が
出てくることもあります。
- ■換価分割
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換価分割とは不動産などの遺産を売却し、得られた売却金を兄弟間で分配する方法です。
3000万円の不動産があった場合、不動産を売却して1500万円ずつ受け取るのが換価分割です。
代償分割は、特定の相続人が財産を相続する代わりに、他の相続人に「代償金」を支払う分割方法です。
- ■共有分割
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次に、兄弟で共有する方法です。この方法は本当に最後の手段であり、まずおすすめしません。
いったん不動産が共有になると次の相続が発生した場合、通常はさらに人数が増えます。
共有の人数が増えるということはいざ売却や担保に入れるなどの行為を行う場合、共有者全員の同意、手続きへの協力がなければならないため容易に進みません。兄弟の誰かが亡くなってその相続人が相続手続きを怠れば、将来的にほぼ何も権利を動かせない状態になってしまいます。
よって、共有にする場合は近日中の売却を前提とする場合などに限られてくるでしょう。
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大木さん:相続がはじまってから、不動産の売却をしたり手続きをしたりするのは大変ですね。
絹川先生:相続財産のほとんどが不動産になる、ということは相続開始前からわかっていたはずです。
不動産は分けにくい財産ですから、資産家でない家庭でも遺言の作成は必須と考えましょう。
大木さん:相続開始後の争いを防ぐためにも、専門家にはやめに相談することが大切ですね。