第286回【相続の事例から考える】配偶者居住権:配偶者居住権をうまく利用すれば、遺言書がなくても配偶者が済む場所に困ることもなく円満な相続をむかえることができます。放送日:2023.10.12

  • 【リスナーからの相談】
    Bさん(奥様)ご夫婦は二人暮らし。
    しかし、突然の不幸があり旦那様が亡くなってしまいました。
    相続財産は自宅4000万円と預貯金1000万円。
    Bさんご夫婦には遠方に住む疎遠の娘さんが一人おり、相続人はBさんと娘さんです。
    しかしBさんと娘さんは疎遠になっておりうまく話し合いができない状況。
    このまま、法定相続分通りに分けるために自宅は売却するしかないのでしょうか。
  • 【質問内容のおさらいと回答】
    絹川先生:相続人同士の関係が悪く、話し合いができない、という状況ですね。
    大木さん:関係が悪くて話し合いにならない、というのはよくあることなんですか?
    絹川先生:今回のケースの場合、おそらく遺言書は用意されていなかったのでしょう。そうなると、遺産分割協議を開き相続人同士で話し合う必要があります。
    しかし、うまく話し合いができず揉めてしまう場合には、法定相続分にしたがって遺産を分割するしかなくなります。
    絹川先生:法定相続分に従うということはBさんと娘さんそれぞれどのような配分になるか分かりますか?
    大木さん:Bさん

    絹川先生:そうですね、つまり今回のケースでは2500万円ずつ、遺産を分けることになりますが、預金は1000万円しかありません。娘さんに残りの1500万円を相続させるためには、最悪の場合、自宅を売却しなければいけなくなるかもしれません。

    大木さん:長年住み続けた家を売却し、また新たな住まいを見つけるのは相当大変ですよね…

    絹川先生:そうですよね、このような事態が起こらないようにするために、2020年4月から新しく認められた権利があります。大木さん、覚えていますか?

    大木さん:配偶者居住権ですね、

    絹川先生:そうですね、配偶者居住権とは、「自宅を、住む権利(居住権)と、それ以外の権利(所有権)に分離し、住む権利は配偶者が相続し、それ以外の権利は、他の相続人が相続する」という仕組みです。

    配偶者居住権を活用すれば、Bさんは自宅に住み続けられるだけでなく、生活をしていくための現金も手にできます。家を売却する必要もなくなります。

    大木さん:なるほど、一番は遺言書を書いておくことが大切ですが、もしもの時には、「配偶者居住権」の活用も頭に置いておくと良いですね!

    絹川先生:配偶者居住権の使用には一定の要件が必要ですから、専門家に相談することをおすすめします。