第263回【事例で学ぶ不動産相続】残された配偶者が実家に住み続けたい場合 配偶者居住権をうまく活用して、「住む権利」と「所有権」に分離して相続しましょう。放送日:2023.5.4

  • 家族構成 / Aさん、妻、娘
  • 【事例】
    Aさんは自宅4000万円と1000万円の預貯金を持っていました。
    Aさんは奥様と二人暮らし。
    一人娘がいますが関係はあまりよくなく、離れて暮らしています。
    そして、娘さんとの関係が修復されないままAさんは亡くなってしまいました。
    相続がはじまり、奥さまと娘さんとの話し合いになりましたが、
    奥様は「今ある家に住み続けたい」娘さんは「法定相続分通り1/2の財産がほしい」と主張しています。
  • 【大木さんに質問】
    奥様が実家に住み続けるためにはどうしたらよいでしょうか。

    →「代償分割」:特定の相続人が現物の相続財産を取得する代わりに他の相続人に対して相続分に応じた金銭(代償金)を支払って調整する分割方法。

    法定相続分で相続しようとすると、2500万円ずつ、遺産を分けることになりますが、預金は1000万円しかありません。娘さんに残りの1500万円を相続させるためには、奥様が500万円を用意して娘さんに支払わなければなりません。最悪の場合自宅を売却して現金を作らなければいけなくなるかもしれません。

    そこで、活用できるのが「配偶者居住権」です。
  • 【配偶者居住権】
    配偶者居住権とは、「自宅を、住む権利(居住権)と、それ以外の権利(所有権)に分離し、住む権利は配偶者が相続し、それ以外の権利は、他の相続人が相続する」という仕組みです。

    配偶者居住権を活用すれば、奥様は自宅に住み続けられるだけでなく、生活をしていくための現金も手にできます。家を売却する必要もなくなります。

    配偶者居住権の使用には一定の要件が必要ですから、専門家に相談することをおすすめします。

    *たとえば居住権が1000万円とすると、Aさんは法定相続分2500万円に対して居住権1000万、現金1000万を受領し、娘さんが所有権3000万を相続するといった分け方が可能になります。