第256回【生前対策】法定相続人ではない人に相続したい場合、
遺言書を書くことでご自身の意思を形に残すことができます。放送日:2023.3.16
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【リスナーからの相談】70代
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最近、兄から「最近相続で揉める人が多いらしい」という話を聞きました。
相続というとやはり「揉める」というイメージがありますし、難しいというイメージもあり、何も手をつけずにいました。しかし、自分が遺していく人のことを考えると、遺言書だけでも書いておくべきと思うようになりました。私は、妻、そして養子縁組をしていませんが、妻の連れ子にあたるAに財産を遺したいと考えています。Aのことは本当の息子のように可愛がっていますが妻と結婚したとき、すでにAは成人していたこともあり養子縁組は組んでいません。遺言書で妻とAに財産を渡すと書けば、問題ないでしょうか?
ちなみに、両親は他界しており、血縁関係があるのは兄だけです。
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【回答】
◆ポイント1:家族関係が複雑な場合、相続でもめる可能性がある
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今回のケースでは、奥様の連れ子にあたるAさんとは養子縁組をしていないものの、
相談者はAさんにも財産を残したいというご希望です。
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今回のケースでの「法定相続人」は誰でしょうか?また、それぞれの法定相続分はどのような割合でしょうか?
連れ子は法定相続人ではありません。
妻、そして相談の初めに登場した「兄」が法定相続人にあたります。
また、法定相続分は妻が3/4、兄が1/4
そのため、Aさんに財産を遺したい場合、遺言書は必須です。
また「もし妻に先立たれたら、相談者はAさんに財産を遺せなくなってしまう」心配もあります。
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- ◆ポイント2: まずは遺言書を作成し、ご自身の意思を形に残す
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相談者様と長男で養子縁組をする方法もありますが、まずは相談者様本人がしっかりと遺言書を残し、相続人を確定させることが先決です。遺言書の形式のひとつである「公正証書遺言」では、相談者本人の意思が反映できる遺言書を公正証書として残すことが可能になります。自筆で作成した遺言書とは違い、形式の不備などで無効になることもありません。
また、今回は「遺留分」には気をつける必要はありません。
親族であるお兄様に相続権はありますが、最低限の財産分与を求める「遺留分侵害額請求権」は兄弟にはありません。そのため遺言書がある限り被相続人の意思が尊重されるため、お兄様ではなくAさんに財産を渡すことが可能です。これまで夫婦2人で築いた財産です。相談者様が健康なうちに遺言書を残すことをおすすめします。
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- ◆ポイント3: 奥様が先に亡くなる場合も考慮しておく
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もし奥様が先立つ場合でも、相談者様からAさんに遺産分割できるよう公正証書遺言の作成をおすすめします。奥様の公正証書遺言では、相続人を「夫と息子」と明文化し、また遺言執行者は息子(Aさん)とするとよいでしょう。これで相談者様がご高齢になっても、長男が遺言の内容を執行することが可能です。