第251回【事例をもとに考える相続】配偶者居住権を活用すると、
「自宅に住む権利」と「それ以外の権利(所有権)」に分けて相続することが可能です。
放送日:2023.2.9

  • 【リスナーからの相談】
    質問者:Bさん(女性・60歳)
    先日、夫が亡くなりました。
    相続財産は自宅4,000万円と預貯金1,000万円。
    相続人は娘と私の2人です。
    突然のことで遺言がありません。
    娘とは疎遠になっているので話し合いがうまく出来ないので、
    法定相続分通りに1/2ずつ分けようと思うと自宅を売却しなければならないのでしょうか。
  • 【回答】
    法定相続分通りに分けるとなると財産は2分の1ずつ分けることになります。

    奥さまとしては、「これまで夫と暮らしてきた自宅に住み続けたい」
    娘さんとしては、「法定相続分通り1/2の財産が欲しい」

    法定相続分で相続しようとすると、2500万円ずつ、遺産を分けることになりますが、預金は1000万円しかありません。娘さんに残りの1500万円を相続させるためには、最悪の場合、自宅を売却しなければいけなくなるかもしれません!

    高齢である妻が、住み慣れた自宅を売却し、新しい住まいを見つけるのは大変な話です。
    高齢者の方は比較的、賃貸物件を借りる際も審査が厳しい傾向にありますし、住み慣れない町に引っ越すことは、非常に大きなストレスになると思います。

    このような事態が起こらないようにするために、2020年4月から新しく認められた権利が、配偶者居住権という権利です。
  • 【配偶者居住権】
    配偶者居住権とは、「自宅を、住む権利(居住権)と、それ以外の権利(所有権)に分離し、住む権利は配偶者が相続し、それ以外の権利は、他の相続人が相続する」という仕組みです。

    配偶者居住権を活用すれば、奥様は自宅に住み続けられるだけでなく、生活をしていくための現金も手にできます。家を売却する必要もなくなります。

    配偶者居住権の使用には一定の要件が必要ですから、専門家に相談することをおすすめします。