第244回遺言書のトラブル放送日:2022.12.22
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今月は遺言書について詳しくお話してきましたが、そんな「遺言書」がもとでトラブルになるケースもあります。今回はそんな「トラブルのもとになるNGな遺言書」について確認していきましょう。
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- 【大木さんに問題】
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- Q1.遺言を発見した場合、どのような手続きが必要でしょうか?
- A1.勝手に開いてはいけません。裁判所で「検認」の手続きを受ける。
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- Q2.裁判所で「検認」の手続きを受けた遺言書は必ず有効?
- A2.検認はあくまで「遺言書の存在と内容を明らかにし、その後の偽造を防ぐためのもの」であるため、遺言書の有効性が認められるわけではありません。
しっかりと内容を確認し「有効」な遺言書を作成するためには「公正証書遺言」がおすすめです。
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- 1.あいまいな内容の遺言書
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例えば、「埼玉にある倉庫は長女に相続させる。」などといったあいまいな遺言がされた場合、対象物件の特定が不十分として遺言の当該部分に効力が認められなかったり登記申請が拒否されたりする可能性があります。
この場合、長女は他の相続人に対して所有権確認訴訟を提起しなければならず、何のために遺言をしたのか分からなくなってしまいます。
このように「何となく伝わるだろう」「妻や息子達なら皆まで言わなくても分かってくれるはずだ」という気持ちであいまいな遺言を作ると、後で大変な問題になってしまいます。
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- 2.無効の遺言書
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自筆証書遺言(自分一人で書く遺言)は、様式を誤って無効になってしまったり、内容が十分に具体的ではなく効果が認められなかったりすることがあります。また、相続人間で、遺言は偽造ではないか等の紛争が生じるリスクがあります。
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- 3.遺留分が侵害された遺言書
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「財産は全て長男に相続させる。」という遺言は昔から割と広く用いられてきましたが、他の相続人は何ももらえないことになるため、遺留分侵害額請求による紛争勃発のリスクがあります。遺留分には十分注意して相続分を指定することが必要です。
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- 4.遺産分割後に発見される遺言書
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遺言書の存在を誰も知らないまま遺産分割協議が終了、その後自宅で遺言書が発見されるケースがあります。
基本的には発見された遺言が優先することにはなりますが、解決までの間に不動産が第三者に売却されるなど、権利関係に変動が生じる可能性もあり、裁判で必ず勝てるとは限りません。何よりも、紛争解決に費やされた時間やお金は返ってきません。
このように、遺言書に関しては、特に「自筆証書遺言」の場合においてトラブルが起きることがあります。
遺言無効確認訴訟を行う場合、法律により調停を先に行う必要があります。また、遺言無効が認められてもその後に遺産分割調停や審判を行う必要があり、時間が非常にかかるので早期解決は難しくなります。
せっかく書いた遺言書がもとでトラブルになってしまうことを避けるためには、「公正証書遺言」がおすすめです。
また、次週は「遺言書にまつわるトラブルを防ぐ方法」についてお話します。