第222回遺言ってどんなもの?放送日:2022.07.21

  • 遺言は大きくわけて2つあります。
  • 【自筆証書遺言】
    自筆証書遺言は、内容のすべてを本人が自筆で作成する必要があり、必ず日付を書き署名押印をしなければなりません。
    この方式によるメリットは、だれでも簡単に作成できるという点です。

    しかし、このことは逆に言うと、本人以外の第三者による改ざんが行われる可能性が高いことも意味します。
    また、検認といって、相続開始時に家庭裁判所による手続を踏む必要性があるほか、そもそも遺言書自体をどこかに失くしてしまうリスクもあります。

    さらに、民法の定める要件を少しでも満たさないと、無効となってしまう可能性もあります。例えば、日付を「令和4年7月吉日」と書いたとしても、特定を欠くとして遺言内容すべてがなかったことになってしまうのです。
  • 【公正証書遺言】
    公正証書遺言は、公証役場で遺言内容を口頭で伝えたうえで、それを公証人に筆記してもらう方式です。

    実際は、事前に公証人に対してどのような遺言をするかを伝えるため、公証役場において「口頭でいい忘れてしまった」ということも通常ありません。専門家である公証人が作成するため、遺言が無効ということは普通ありません。

    また、第三者による改ざんのおそれはなく、相続開始時に検認をする必要もありません。 ちなみに、公証役場に行くことが出来ない事情がある場合には、公証人に病院や自宅まで出張してもらうこともできます。

    公正証書遺言のデメリットとしては、公証人に支払う費用が発生してしまう点がありますが自筆証書遺言を作成して無効になってしまうリスクや、秘密証書遺言を作成して、その存在や内容が相続人に知られず、遺言の内容を実現できないリスクを考えれば、そこまでの負担感はないのではないでしょうか。
  • 【さいごに・・・】
    2020年7月10日より自筆証書遺言保管制度がスタートしました。自筆証書遺言が大幅に使い勝手が良くなったことにより、保管制度を利用して自筆証書遺言を作成するのと公正証書遺言を作成するのとではどちらの方が良いのかという疑問を持つ方も出てきたようです。自筆証書遺言保管制度にも公正証書遺言にもメリットデメリットがありますし、両者の特徴を踏まえたうえでどちらが自分にとって使いやすいかをよく考えて選択するのがいいでしょう。

    しかし、遺言の有効性の担保や紛争防止効果については変わらず公正証書遺言にかなり分があります。今後も公正証書遺言を中心に考えつつ、内容がシンプルで有効性に疑問が持たれにくい(遺言者がまだ若く意思能力の紛争が起きる可能性が低いなど)場面で自筆証書遺言の利用が進むのではないかと思われます。