第219回相続対策「節税対策」:生前贈与の活用放送日:2022.06.30

  • 【事例】
    • 定年を迎え、相続について考え始めたAさん。
      Aさんには3,000万円の自宅と3,000万円の預貯金があります。
      相続人は息子2人。おそらく相続税がかかると思うので、生前贈与を検討しています。
  • 【整理】
    • 相続財産:自宅3,000万円と預貯金3,000万円
      相続人:息子2人
    • 「おそらく相続税がかかると思う」とのことですが、まずは何も対策を行わなかった場合の相続税額を算出してみましょう。
  • □何も対策をしなかった場合
    • 課税遺産総額は遺産総額6,000万円から基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)4,200万円を差し引いて1,800万円となります。
      この1,800万円を長男と次男でそれぞれ900万円で分割します。
      相続税額は長男、次男それぞれ900万円×10%=90万円となります。
    • しかし、事前に対策を行い「生前贈与」をした場合はどうでしょうか。
  • □生前贈与を活用した場合
    • 一人あたりが毎年(1月1日から12月31日までの1年間)もらう財産が110万円までであれば非課税です。
      これを暦年贈与と言います。暦年贈与は「もらう人1人あたり」の非課税枠となるため何人に贈与しても構いません。
      つまり、計画的に複数人に年間110万円贈与していけば、多額の非課税の生前贈与が可能です。
    • たとえば、息子2人に対し5年間暦年贈与を行った場合、
      (110万円×2人)×5年間=1100万円となり、
      遺産総額を4900万円まで減らすことが出来て、その分税負担を軽くすることができます。
    • せっかくの生前贈与も、やり方を間違えてしまうと、すべてが水の泡になってしまいます。 また、相続発生時(被相続人が亡くなった時)から遡って3年以内の贈与については、相続財産に合算されてしまうという規定が設けられていますから、専門家に相談しながら適切な対策を行うことをおすすめします。
  • 【持ち戻しの期間が3年から10年に?】
    現在の課税ルールでは、暦年課税による贈与のうち、「相続開始前3年以内に贈与されたもの」は、3年以内であれば「贈与税がかかっていたかどうかに関係なく」相続税に加算される(持ち戻しといいます)ことになっています。
    財産を持っている人が死亡した時点で、「その死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間に贈与された財産」は、相続税の対象、つまり課税対象となります(持ち戻し)。そのため持ち戻しの年数が3年から増えるということは、課税対象の金額が増えるということになります。
    専門家の間では、2024年頃から持ち戻しの期間が、3年から10年になるという予測です。
  • 二重課税を防ぐための贈与税額控除
    ・110万円以下の生前贈与も対象
    ・孫への生前贈与は対象外→孫やひ孫も対象に!
  • 【例外】孫でも対象になるケース
    ・遺言書がある場合
    ・生命保険がある場合
    ・特例を使った生前贈与は対象外