第209回養子縁組をしていないが、義理の息子に財産を残したい放送日:2022.04.21
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- 【Cさん(56歳男性)の事例】
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10年ほど前に現在の奥さまと結婚したCさん。当時奥さまには成人した息子さんが1人おりましたが、再婚には賛成してくれていて、今でもCさん夫婦の面倒をよく見てくれているそう。Cさんには実子はおらず、ご両親も既に他界し、疎遠になっているお兄様が一人いるのみ。本来の相続人は奥さまと兄の2名になりますが、Cさんは奥さまと義理の息子さんに財産を残したいと考えています。ただ義理の息子さんとは養子縁組をしていない状態で、既に息子さんも家庭を持っていることから今後も養子には入らないという意向。何か良い方法がないか苦慮しています。
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- ◆ポイント1:家族関係が複雑な場合、相続でもめる可能性がある
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今回のケースでは、相談者様の戸籍上の親族は奥様とお兄様のみ。しかしお兄様とは疎遠で、相談者様はお兄様に遺産が分配されることを望んでいません。奥様の連れ子である長男とは養子縁組をしていないものの、相談者様を父親として交流してくれているため、できれば遺産を残したいというご希望です。しかし連れ子は法定相続人ではなく、「もし妻に先立たれたら、自分は長男に遺産を残せなくなってしまう」との心配もあります。
「息子と今からでも養子縁組をしたほうが良いのかも」と考えるものの、長男も家庭を持っているため、良い方法がないか苦慮しているというご相談です。
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- ◆ポイント2:まずは遺言書を作成し、ご自身の意思を形に残す
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相談者様と長男で養子縁組をする方法もありますが、まずは相談者様本人がしっかりと遺言書を残し、相続人を確定させることが先決です。遺言書の形式のひとつである「公正証書遺言」では、相談者本人の意思が反映できる遺言書を公正証書として残すことが可能になります。自筆で作成した遺言書とは違い、形式の不備などで無効になることもありません。
これまで夫婦2人で築いた財産です。親族であるお兄様に相続権はありますが、最低限の財産分与を求める「遺留分侵害額請求権」はありません。そのため遺言書がある限り被相続人の意思が尊重されるため、お兄様ではなく長男に財産を渡すことが可能です。相談者様が健康なうちに遺言書を残すことをおすすめします。
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- ◆ポイント3:奥様が先に亡くなる場合も考慮しておく
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もし奥様が先立つ場合でも、相談者様から長男に遺産分割できるよう公正証書遺言の作成をおすすめします。奥様の公正証書遺言では、相続人を「夫と息子」と明文化し、また遺言執行者は長男とするとよいでしょう。これで相談者様がご高齢になっても、長男が遺言の内容を執行することが可能です。