第207回妻とこどもたちが相続でもめないために放送日:2022.04.07

  • 【Aさん(65歳男性)の事例】
    妻やこどもたちが相続でもめないように、との思いから生前贈与を検討し始めたAさん。
    相続財産は現在住んでいる家(1800万円)と預貯金3300万円と生命保険500万円があります。相続人は妻、長男、長女、次男の4人です。
    Aさんは妻には自宅を、預貯金はこどもたちに平等に分けたいと考えていますが、家族間で揉めごとが起きないか心配しています。
  • ◆ポイント1:相続か生前贈与、どちらが適切かを検討しましょう
    本件の相続税を計算してみます。

    財産総額は5,600万円ですが、生命保険500万円は非課税(500万円×法定相続人4名=2,000万円まで)となりますから、5,100万円が課税対象になります。基礎控除額は5,400万円ですから、相続税はかかりません。

    一方、今回の相談である「妻に自宅を贈与して、現金を3人の子供たちに平等に渡す」という贈与計画には問題があります。なぜなら妻に現金を遺せなくなりますので、妻の老後資金が不足するからです。

    加えて妻が自宅を相続しなくても、妻には配偶者居住権(2020年に誕生した、遺された配偶者が自宅に住むことができる権利)がありますので、仮に家族間でもめても、自宅を出て行かなければならない事態を招きません。
  • ◆ポイント2:家族会議を開催し預貯金の分配方法について考える
    相続税がかかるかどうかの心配はなくなりましたので、「家族がもめないために」預貯金をどのように分割するかを検討します。
    預貯金を生前贈与するか、相続が開始まで待つか?
    自宅を取得した人と、預貯金を取得する人のバランスは?
    相談者が認知症になったら?
    等について、各相続人のライフプランを考慮して家族で話し合う必要があります。
    また、遺言書の作成も有効でしょう。
  • ◆追加アドバイス1:年間110万円までの贈与であれば、贈与税はかかりません
    まず贈与税の計算には、その年の1月1日から12月31日までの1年間に、贈与によりもらった財産の価額を合計します。続いて、その合計額から基礎控除額110万円を差し引きます。次に、その残りの金額に税率を乗じて税額を計算します。この課税方式を「暦年課税」と言い、この基礎控除の恩恵を活用した相続税対策が「暦年贈与」と呼ばれています。
  • ◆追加アドバイス2:贈与税の配偶者控除
    贈与税の配偶者控除とは、配偶者が居住用不動産の購入またはその建築資金を贈与されたときに、贈与された金額から2,000万円まで控除することができるという制度です。前述の基礎控除110万円とあわせると、年間2,110万円まで贈与税がかからないことになります。