第206回なくならず、見つけやすく、偽造されない遺言書の保管方法放送日:2022.03.31

  • 【事例】
    60歳になったAさんは、万が一の際に備えて遺言書を作成しました。
    これでひとまず安心と思いましたが、作成した遺言はどうやって保管するのが良いのでしょうか。
  • ─ 遺言書の種類によって保管方法は異なります。
  • ≪保管に際して注意しておくべきこと≫
    遺言書は、自分の財産の内容やその配分の仕方などが記載されている、大変重要な書類です。その書類がもとになって、親族がトラブルに巻き込まれる可能性も十分にあるということを、まずは認識しておく必要があります。かといって、自分だけにしか分からないような場所に「隠しておく」ようなことをすると、万が一の際にも遺言書が見つからずに、残された家族に思いを伝えられなくなったり、余計な負担をかけたりすることになりかねません。その反対に、見つかりやすい場所に保管しておくと、偽造や変造、破棄などをされる恐れもあります。遺言書を自分で保管する際には、信頼できる人にだけ、遺言書の存在と場所を伝えておくという方法が良いでしょう。「信頼できる人」といっても、家族や友人ではトラブルになる可能性は大きいので、専門家に依頼する(遺言執行者に指定する)のが確実です。
  • ≪遺言書の種類によって保管方法は異なる≫
    自分の手で作成した「自筆証書遺言」を保管する場合は、先ほどもお話ししましたように、紛失したり、偽造されたりする恐れがあるので、専門家に保管を依頼するとともに、その専門家を遺言執行者に指定しておくようにすると良いでしょう。遺言執行者を指定しておくと、遺言書の内容に従って手続きを進めてくれるので、残された家族に煩わしい手続きをさせる心配もなくなります。

    公証人に依頼して作成する「公正証書遺言」や「秘密証書遺言」の場合は、保管の心配は不要です。なぜならば、それらの遺言書については、公証役場に保管されることになるからです。公証役場に保管されるため、誰かに偽造や破棄をされるといったリスクを回避することができます。

    それでも、遺言書が公証役場に保管されていることは、誰かに伝えておかなければなりません。公正証書遺言は、相続人などが公証役場に問い合わせれば、遺言書の所在やどこで作成したが分かるシステムに登録されています。相続人の立場で、遺言書の有無が分からないような場合でしたら、公証役場で遺言書の有無を調べてもらうと良いでしょう。