第202回複数の遺言書が見つかったら?放送日:2022.03.10

  • 【事例】
    先日父が亡くなりました。
    父からは遺言書は金庫に入れているからと言われており、確かに遺言書は金庫の中に保管されていたのですが・・・なぜか複数枚の遺言書が出てきました。どうしたらよいのでしょうか。
  • 問題①:どの遺言書が有効?
    問題②:2012年に書いた公正証書遺言と2013年に描いた自筆証書遺言が出てきた!有効なのは?
    ─ 自筆証書遺言か公正証書遺言に関わらず、日付が最新のものが有効
  • 複数の遺言書が見つかることは、決して珍しいことではありません。「遺言書は1通しか作成してはいけない」という決まりはありませんから、何度も書き直しをしたり、下書きしたものをそのまま手元に残しておいたりしても構いません。ただし、何通も遺言書が出てきた場合、残された親族は「どれが有効な遺言書なのか?」と困惑してしまいます。もし、この事例のようなケースに遭遇した場合は、複数ある遺言書の日付に注目してください。法律では、最後に作成された遺言書、つまり、最新の日付の遺言書が有効であると定められています。異なる時期に書かれた遺言書Aと遺言書Bの内容が、大きく異なるようなこともあるでしょう。その場合も、やはり最新の日付の遺言書が有効となります。法律では、新しい遺言書によって、古い遺言書の内容は取り消されたものと見なされるからです。
  • では、すべての遺言書に日付が入っていなかったり、押印がなかったりする場合は、どのように判断すれば良いのでしょうか?
  • そのような場合は、すべての遺言書は無効となります。遺言書には必ず、日付と押印が必要になるからです。
  • ≪最新の自筆証書遺言と、さらに過去に書かれた公正証書遺言≫
    公正証書遺言は、公証人という専門家が作成し、原本が公証役場で保管されるものですから、「日付が前でも、公正証書遺言のほうが有効」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、いくら公正証書遺言が専門家の手で作成され、公証役場で保管されるからといっても、自筆遺言証書に優先するという決まりはありません。したがってこの場合も、やはり最新の日付になっている自筆証書遺言の内容に従う必要があります。ただし、何度もお話ししますが、自筆遺言証書が正しい書き方になっており、法的に有効と見なされることが条件となります。