第196回特別受益放送日:2022.01.27
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- 【事例】
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父の相続手続をすることになったAさん。
Aさんには兄が二人おり、相続人はAさんを含めて3人です。
そういえば・・・父の生前、結婚資金の名目でAさんに数百万円の援助をしてくれました。
すると、兄二人から「不公平じゃないか!?」と言われてしまいました。
やはりAさんの相続分は減ってしまうのでしょうか。
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- 問題①:生前の資金援助は遺産の先渡しとみなされる?
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─ 遺産の先渡しとみなされる。
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- 問題②:結婚資金や住宅の購入資金などの援助を受けた場合、それらの援助は○○○○と呼ばれる。
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─ 被相続人から、生前贈与や遺贈によって、結婚資金や住宅の購入資金などの援助(特別な利益)を受けた場合、それらの援助は「特別受益」と見なされます。そして、特別受益を受けた相続人は、「特別受益者」と呼ばれます。
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相続の場面で特別受益と見なされるのは、「婚姻、養子縁組のため、もしくは生計の資本として」の贈与や遺贈になりますので、前述の結婚資金、住宅購入資金などがそれに当たります。とくに、被相続人の生前に受け取っていた援助(生前贈与)に関しては、「遺産の前渡し」と見なされます。
遺産相続の場面で特別受益の制度が設けられているのは、生前贈与や遺贈を受けた相続人と、他の相続人との間で公平性を保つためです。したがって、特別受益者がいる場合の相続手続きについては、特別受益の分を考慮して財産を分配する必要があります。
特別受益者がいた場合の相続額の算出方法ですが、まずは相続が開始される時点での財産に、特別受益者が受けた特別受益の額を加算します。特別受益の額が加算された相続財産は「みなし相続財産」といいます。
次に、みなし相続財産を、法定相続人の間で分配します。特別受益者については、分配された額から、特別受益分を差し引いた額を相続することになります。
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- ◆特別受益の対象となるもの
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・婚姻、養子縁組のための贈与:結納金・持参金・花嫁道具・挙式費用・新婚旅行費用・新居の費用 など
※金額が少ない場合などは特別受益と見なされない場合があります
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・生計の資本としての贈与:住宅購入資金・事業(開業)資金・大学進学費用・海外留学費用 など
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・その他:生命保険金などが非常に高額だった場合などは、特別受益と見なされることがあります。
「小さい頃からお小遣いをもらっていた」「誕生日プレゼントに宝石をもらっていた」といったことで、不公平だと主張される場面があるかもしれません。それらの場合、よほど高額でない限り、基本的に特別受益と見なされることはありません
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