第193回生前の口約束放送日:2022.01.06

  • 【事例】
    姉から借りた土地を使って、趣味で野菜を育てていたAさん。
    しかし、姉が亡くなってしまいました。
    「私が死んだら、畑はAさんにあげる」とAさんの姉は話していたそう。
    口約束を遺言ととらえても良いのでしょうか。
  • 問題:口約束は、遺言として認められる?
    ─ 遺言は書面で残すことが大前提、口約束は遺言と認められない。
  • 被相続人の「あなたにあげる」という言葉が問題になることは、遺産相続の場面ではよくあることです。このケースのような、被相続人が生前に発した「私の死後、あなたにあげる」という言葉は、結論から言えば遺言にはあたりません。遺言は書面で残すことが大原則で、「口約束」では遺言と認められないからです。

    では、このような被相続人の言葉は「単なる口約束」であって、全く無意味な物であるかといえば、そうではありません。被相続人は「贈与の意思を示した」ということになるのです。「私の死後、あなたにあげる」は、死を原因として発生する贈与であることから、「死因贈与」といいます。
  • ◆死因贈与が認められるための条件
    1.承認の有無
    生前の被相続人から「あなたにあげる」と言われていたと主張する本人のほかに、実際にそれを見聞きしていた証人がいることが必要になります。
    2.相続人全員の承諾
    死因贈与が認められるための条件の二つ目は、相続人全員が承諾すること。
  • ◆死因贈与で得られるメリット
    死因贈与だった場合、姉の土地は直接Aさんが受け取ることができます。しかも、課税されるのは相続税のみとなり、余計な贈与税が発生しなくなるのです。