第189回相続放棄の取り消し放送日:2021.12.09
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- 【相談内容】
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母の遺産を兄弟で相続することになったAさん。
しかし、相続手続きの途中で兄との関係が悪化し、その場の勢いで「相続放棄してやる!」と言ってしまいました。その後、Aさんは相続放棄の手続きをするも、兄からは関係修復を持ちかけられ仲直り。
冷静になってみると相続放棄するべきではなかったと思ったAさんは後悔しています。
相続放棄を取り消すことはできるのでしょうか。
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- 問題:相続放棄を取り消すことはできる?
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─ 原則取り消すことはできない。
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- 【解説】
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被相続人に多額の借金があり、相続することで負債を抱えてしまう場合や、相続争いに巻き込まれるのを敬遠する場合などに選択されるのが「相続放棄」です。
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相続放棄を選択すると、財産のプラス・マイナスに関わらず、相続に関する一切の権利について、文字通り「放棄」することになります。結論をお話ししますと、相続放棄の手続きは、一度行うと取り消すことはできません。ただし、例外もありますので、その点を解説しておきます。
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先ほどもお話しした通り、相続放棄を取り消すことはできません。また、一部の財産だけを相続する「限定承認」を選択した場合も、取り消しは認められません。これらの取り消しが簡単に認められるようであれば、相続手続きを確実に行うことが難しくなってしまうためです。ところが、例外的に相続放棄の取り消しが認められることもあります。
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例えば、詐欺や脅迫によって相続放棄をした場合です。他の相続人から「被相続人には多額の借金があった」と聞かされていた場合や、「相続放棄しないと危害を加える」と脅されたりしたような場合は、取り消しができるのです。そのほかにも、未成年者が法定代理人に無断で相続放棄をした場合や、成年被後見人が相続放棄をした場合なども取り消しが可能になります。また、何らかの勘違いがもとで相続放棄をしたような場合も、取り消しが認められることがあります。
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相続放棄の取り消し手続きは、相続放棄の手続きと同様に、家庭裁判所で行うことになります。
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ただし、取り消しの手続きは、追認できる時点(騙されていたと気付いたとき、無断で相続放棄が行われたと知ったときなど)から6ヶ月を経過した場合は、時効によって取消権が消滅します。また、相続放棄をしてから10年が経過した場合も同じで、取消権は消滅します。
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家庭裁判所に相続放棄の申述を行っていたとしても、まだ申述が受理されていないのであれば、相続放棄の申述そのものを取り下げることが可能です。