第181回預貯金の払い戻し放送日:2021.10.14

  • 【質問】
    先日、夫が亡くなりました。葬儀費用で200万ほど必要なのですが、私は貯金がなく、亡き夫の預貯金から引き出したいと考えていますが、友人から「相続された遺産を勝手に使ったらだめだよ!」と注意を受けました。今回のように急な支払いが必要な場合はどうしたらよいのでしょうか。
  • 【状況整理】
    登場人物:夫、妻(質問者)、長男、次男
    財産内訳:自宅(3000万円)、預貯金(1200万円)
  • 問題:葬儀費用を被相続人の預貯金から支払っても良い?
    ─ YES ただし150万円のみ引き出しが可能です。
  • 【解説】
    遺産分割における公平性を図りつつ、相続人の資金需要に対応できるよう、相続法改正により「相続された預貯金について、相続人全員の同意がなくても、遺産分割協議前に払戻しが受けられる制度」が新設されました。この制度は、以下のようなルールがあります。

    共同相続人のうちの一人が金融機関の窓口で仮払いの請求をする場合は、相続開始時の預貯金額×1/3×その相続人の法定相続分=単独で払戻しをすることができる金額となります。今回のように1200万円の預貯金があり、共同相続人が配偶者と長男、次男の三人で、配偶者が払戻しの請求をした場合、
    1200万円×1/3×1/2=200万円

    が、妻が払戻しを受けられる金額です。ただし、上記計算式で算出した金額の範囲内であれば自由に引き出せるというわけではありません。この改正法の趣旨は、残された人が当面お金に困らないようにすることなので、改正法では、「金融機関ごと(複数の口座がある場合は合算)の上限金額」を省令で定めることとしており、その上限額を150万円(標準的な必要生計費、平均的な葬儀費用等を勘案した法務省の定める額)とする案が2018年9月28日に公表されました。なのでこの場合でも引き出せる限度は150万円になります。