第170回遺産分割協議時の約束放送日:2021.07.29
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先日、父が亡くなりました。相続人は、私、母、兄の3名です。兄が遺産分割協議時に、「母と同居し、その世話をする」と約束をしたので、その代わりに、法定相続分より多くの遺産を兄に分けることにしました。それにもかかわらず、兄は母と同居せず、まったく世話をしません。遺産分割をやり直すことはできないのでしょうか。
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- 【回答】
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原則として遺産分割をやり直すことはできません。
遺産分割に際して、親の面倒を誰が見るのかという約束がなされる場合もありますが、その約束は、遺産分割協議とは別個の特約であり、単にその約束をした相続人間でのみ効力を有するある種の契約関係にすぎないと考えられるからです(最高裁平成元年2月9日判決参照)。
従って、親の面倒を誰がみるかということについては遺産分割の問題とは切り離して相続人間でよく話し合いをしておかなければなりません。
また、親の面倒を誰がみるかということについての合意が守れなかったとしても、不満が生じないような遺産分割協議をしておく必要があります。
ちなみに、条件付き遺言、負担付遺言というものがあります。
これはともに有効な遺言です。
例えば、
長男が〇〇大学に入学したら遺産の半分を相続させる
長女が医者になったら全財産を相続させる
~条件付き遺言~
長男が家業を継いだら遺産の半分を相続させる
ペットの面倒をみるなら遺産の半分を相続させる
~負担付き遺言~
では、これらの遺言のもと、条件を守っていないのに相続した場合はどうなるか?
この場合、他の相続人が条件を守るように求めることができ、全く条件を守らなかったり、実行しなければ、家庭裁判所へ遺言書の取消を求めることが出来ます。