第152回認知症と相続④放送日:2021.03.25
-
事前の相続対策がいかに重要か、相続人や被相続人が認知症の場合の事例からよくわかったかと思います。相続は突然発生するもの。事前にトラブルを防ぐために重要になってくるのが「遺言」です。
しかし、なんの前触れもなく、いきなり親に「遺言を書いておいた方が良いよ」と言っても、それを言われた親は、「縁起でもない」、「まだまだ元気だよ」と言い返されて話しが終わってしまうことでしょう。まだまだ日本では、死後のお金(遺産)の話しをすること自体を避ける傾向にあります。そのような状況のなかで、親に遺言を書いてもらうためのコツとして、まずは自分が遺言を書いてみましょう。
自分が遺言を書いたことを親に伝えると、「え?なんで?」と必ず言われるでしょう。なぜ自分よりも先に子供が遺言を書いたのか気になるでしょうから、まずはそこから遺言について話し合うきっかけになります。「遺言を書くなら公正証書遺言がいちばん良いよ」、「公証役場に行くんだよ」、「手続きの進め方はこんな感じだよ」など、自分が遺言を書いてみた体験談を話すことで、説得力も上がりますし、他人から言われるよりも自分の子供に言われた方が真剣に話しを聞いてくれることでしょう。
-
また、「終活」の一部として書いてもらう、という方法もあります。
終活とは、自分の人生の終わりに向けての活動のことをいいます。自分の「死」までに色々な準備をおこないます。遺品や人間関係などを清算する生前整理や、どのような葬儀をおこなってほしいかなどを、エンディングノートと呼ばれるものに書き出していきます。この終活のなかに遺言を書くことも含まれています。子供から「遺言を書いておいてほしい」とだけ言われてもなかなか正面から向き合う事は難しいですが、終活の一部として取り組めば、比較的すんなりと受け入れることができるかと思います。
また、最近では、「遺言書キット」という自分ひとりで遺言書を作成できるものが販売されています。詳しい説明や遺言書を書くのに必要な用紙、封筒などが一式入っていますし、その他にも分かりやすく解説されている書籍なども多く売られています。このようなものを使ってみるのも親に遺言を書いてもらうひとつのきっかけになるでしょう。近年、公正証書遺言の件数が右肩上がりで伸びています。この伸びは、死亡者数の伸び率を上回っています。徐々にではありますが、遺言を書くことの重要性が浸透してきたことだと考えられます。しかし、まだまだ相続トラブルは跡を絶ちません。色々な事情があるにせよ、遺言を書いていれば防げた事案も多く存在します。現在、世の中の風潮として、元気なうちに親に遺言を書いてもらうことが自然なことになりつつあります。遺言を書いてもらうコツやきっかけなどは上記で説明した通りいくつかありますので、まずは親と遺言について話し合ってみましょう。
なお、遺言を書くためには本人に意思能力があることが大前提となります。認知症によって意思能力を喪失した後では遺言を書くことすらできなくなりますので、高齢な方の場合にはなるべく早い段階で遺言を作成した方がいいに決まっています。