第131回不平等な遺言放送日:2020.10.29

  • 【質問】
    私は、3人兄弟の末っ子です。先日、母親が亡くなり、兄弟4人が相続をすることになりました。遺言を見ると、「長男に遺産の大部分である実家の土地建物を分与する。弟と私には、100万円程度の預貯金を残す」とのこと。私と弟はショックを受け、しばらく悩んでいたのですが、やはり納得ができないので、遺留分減殺請求をすることにしました。

    兄に対し、遺留分減殺請求の通知書を送ると、逆上して、「非常識だ。母親の遺志に背くのか?」などと言ってきましたが、後に引けず、遺留分減殺調停を起こして、話合いをしました。調停委員の説得もあって、遺留分に該当する800万円を支払ってもらうことができましたが、兄とは、その後絶縁状態です。兄弟の縁を切ってまで、遺留分現札請求をすることが正しかったのでしょうか。今になって考えると、分からなくなってしまいました。
  • 【回答】
    平等な遺言があると相続トラブルになります。それは、兄弟姉妹以外の法定相続人には「遺留分」があるためです。

    遺言によって遺留分を侵害すると、遺留分の権利者は遺留分減殺請求をして遺産の返還を求めるので、かえって遺産トラブルの原因になってしまうのです。遺留分減殺請求が起こると、お互いに感情的な対立が発生して解決しづらくなり、遺留分減殺調停や、ときには遺留分減殺訴訟が起こり、長期間の争いに発展することも多いです。

    トラブルを避けるためには、遺留分を侵害しない内容にすべきです。たとえば、今回の例では、母親が兄に不動産を残すとき、ある程度の現金資産も用意しておいて、質問者と弟にも十分な価格の現金や預貯金などの別の資産を残しておいたら、遺留分侵害が発生せず、トラブルを防ぐことができました。

    遺産の中に不動産しかない場合には、生前に不動産を売却することも1つの方法ですし、どうしても特定の相続人に多くの遺産を相続させたい場合には、生前贈与を利用することをおすすめします。たとえば、居住用の不動産を長男に生前贈与しておいたら、それは遺産分割の対象にならないので、長男が確実に取得することができます。無用なトラブルを避けるためには、ただ遺言を残せばいい、というわけではないのです。