第125回相続放棄の期限、勝手に行われた遺産分割放送日:2020.09.17

  • 突然届いた請求書と相続放棄
  • 【質問】
    私は母と再婚した父との間で育ち、本当の父親の名前も知らなければ顔も知りません。そんな中、突然家に300万円の請求書が届きました。あまりの金額に驚きながら、よく読んでみると4ヶ月前に実の父が借金を残して亡くなり、私に支払いの義務があるとのこと。これは早く相続放棄をしなければ、と思いましたが父が亡くなったのは4ヶ月も前のことです。確か相続放棄は3ヶ月以内にしなければいけなかったと思うのですが、私は相続放棄をすることができないのでしょうか?
  • 【回答】
    相続放棄できる

    相続放棄は原則として、相続開始を知った時から3ヶ月以内にしなければいけません。相続開始を知った時から3ヶ月なので、全く疎遠で連絡を取っていなかった父の死亡を知る由もないわけですから、今回のハガキが届いてから3ヶ月以内に家庭裁判所へ相続放棄をすれば簡単に受理してもらえそうなものです。このように考えられる方は本当に多く、もう一歩踏み込んだところまで理解している方はあまりいらっしゃらないようなのでここで言及しておくと、家庭裁判所の立場から考えるとその人が相続開始をいつ知ったかなんてことはわかるわけありませんので、家裁の考えでは実際の死亡日(戸籍上の死亡した日)から3ヶ月が経過しているか否かで考えます。今回のご相談者は既に4ヶ月を経過していますので、自分が知った日からまだ3ヶ月が経っていないとしても、3ヶ月経過した相続放棄として進めていかなければいけません。具体的には、相続開始を知ったのがごく最近でまだ自分が相続開始を知った時から3ヶ月経っていないことを証明していかなければいけないのです。客観的な事実があれば間違いないでしょうが、「自らが相続開始を知った時」を立証することは非常に困難です。このような場合には、それを直接的に立証するのではなく、補填的な資料を揃えたうえで、自分がまだ相続開始を知ってから3ヶ月経過していないことを証明していかなければいけません。 今回のケースで当てはめて考えると、「債権者から届いたハガキ」と「事情説明書」をあわせて添付することで、自らが相続開始を知ったタイミングを証明することができます。
  • 勝手に行われた遺産分割
  • 【質問】*遺言が無い場合
    先日父が亡くなりました。母と共に無事に葬儀を終えましたが、実は相続人には私と母以外に連絡を取っていない姉がいます。数年前、姉は連絡先も告げずに勝手に出ていってしまい、今も音信不通です。今どこにいるのかも分からず、連絡を取ることすらできません。そもそも家族をないがしろにしてきた姉には相続をする必要もないと思い、姉には伝えないまま遺産を二人で早急に分けてしまうことにしました。しかし、数ヶ月後、音信不通だった姉から連絡があり、「私にも相続する権利があるはずだ!」と主張してきたのです。既に財産は分けてしまいましたし、姉に相続する必要はないですよね?
  • 【回答】
    相続する必要がある

    遺産分割が相続人全員参加の遺産分割協議を経てからでなければ勝手に分割してはなりません。今回の場合、連絡先を告げずに出ていった姉が悪いように見えますが、現実は遺産を勝手に分けてしまった2人に非があります。この場合、勝手に行った遺産分割は無効となり、姉を交えた再度の遺産分割協議が必要になります。しかし、今回の件で互いに不信感がある以上、まともな協議ができずに、争いへ発展してしまうというわけです。もちろん冷静な話し合いが出来れば、それに越したことはありませんが、こういった状況で冷静な話し合いをするには、やはり専門家に依頼するのが良いでしょう。 専門家であれば、豊富な専門知識と経験を武器に双方納得できるよう協議をまとめられる可能性が十分にあります。また、トラブルへ発展させないためには勝手に遺産分割せず、戸籍を辿るなどして居住地を調査し、姉に連絡を取るべきでした。もちろん、弁護士などの専門家であれば居住地調査も兄弟姉妹に代わって行うことが可能です。