第123回一代限りの賃貸借契約、安価で譲渡した土地の贈与税放送日:2020.09.03

  • 不動産:一代限りの契約
  • 【質問】
    父は、10年前から土地を借りて、借地上に店舗を建設してパン屋を営んでおりました。しかし、昨年急逝したため、父の店は、相続人である私が引き継いで、経営を引き継ぐことになりました。そこで、地主に挨拶にいったところ、「お父さんと、一代限りという約束をして契約書を交わしている」といって断られました。私は、この店を引く継ぐことはできないのでしょうか。
  • 【回答】
    引き継ぐことができる

    本来、賃貸借契約というのは、契約の当事者が亡くなったときは、その相続人に承継されるものです。
    今回の賃貸借では、相談者のお父さんが一代限りで住むことができる、すなわち、賃借人が亡くなれば、その時点で契約が終了するという、終身特約が設けられていました。しかし、賃借人を保護するための借地借家法という法律があり、今回のような一代限りの終身特約は、賃借人に不利なものということなので、借地借家法に抵触して無効とするのが一般的です。
    したがって、今回の終身特約のところだけが無効になり、賃貸借契約は、相続で有効に承継され、この店を相続することができます。
  • 贈与税 タダでもらった訳ではないのに贈与税がかかるの?
  • 【質問】
    高校生のころから付き合ってきた彼女と、念願叶って来月結婚することになりました。結婚となれば、挙式にマイホームと夢がふくらみます。ただ、出費がかさんで痛いなあと悩んでいたところ、彼女の父親が「大事な娘のためだ、つい最近購入した3000万円の家を500万円で譲ってやる」と言ってくれました。なんて優しいお義父さんなのだ、と喜んで同僚に自慢したところ「贈与税は大丈夫?」と言われました。500万円を支払ったのに、さらに贈与税がかかるのでしょうか?
  • 【回答】
    贈与税がかかる可能性が高い

    贈与税の課税の場面に関していうと、個人から著しく低い対価で財産を譲り受けた場合には、その財産の時価との差額にあたる金額は、財産を譲り渡した人から「贈与」により取得したものとみなされます。
    「著しく低い」かどうかは、個々の事案ごとに判定することになりますが、今回の場合、3000万円ほどで購入した不動産を500万円で譲り、しかも、不動産を購入したのは、つい最近のことなので、不動産の価値が購入した時より大幅に下がっているという事情もなさそうです。(低額譲渡)
    したがって、「著しく低い」と判定される可能性が高いと考えます。そうすると、通常の取引価格と500万円との差額につき、贈与税がかかると考えます。
    今回のように、契約や和解に関して、税務的にはどうなるのか、様々なケースがあります。
    たとえば自転車で事故にあって、賠償してもらった場合、被害者が治療費や慰謝料などを受け取ったとしても、贈与税はかかりません。交通事故で受けた損害の補てんをしてもらっただけと考えられます。
    また、離婚により相手方から財産をもらった場合、通常は贈与税がかかることはありません。相手方から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産関係の清算などのために給付されたものと考えられるからです。ただし、今回の相談と同じように、多過ぎる場合は、その多過ぎる部分について、贈与税がかかることになります。