第117回自筆証書遺言の書き方放送日:2020.07.23
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今週も、先週に引き続き遺言にまつわるお話です。これまで、遺言書を書くことのメリットや、遺言書のメリットについてお話しましたが、今回は「では、遺言はどう書けばいいのか」、遺言書の書き方についてお教えいたします。
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- A.
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先週のおさらいですが、自分で書く遺言書のことを「自筆証書遺言」と言います。
自筆証書遺言は他の2つの形式と違って証人が不要ですが、作成する際は民法で定められた方法を守る必要があります。最低限抑えておくべきことは、どのようなことでしょうか。
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- 1.本人が手書きで書くこと
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基本的なことですが、自筆証書遺言は第三者による偽造を防ぐために本人の手書きで書かなければなりません。
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- 2.一部でも代筆があると無効となる
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- また配偶者などであっても他人が代筆してはいけません。一部でも他人が代筆すると、その時点でその遺言所は無効となってしまいます。病気などで体力が落ちているときに手書きの文章を作成するのは大変なので、病気などのリスクを想定して元気なうちに遺言書を書いておきましょう。
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- ※相続法改正で2019年から財産目録はパソコン・ワープロ作成できるように
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従来、自筆証書遺言はすべて手書きで書くことが必須、パソコンやワープロなどで作成することは認められておらず、財産目録をパソコンで書いたことで、遺言書全体が無効になるケースがありました。
財産目録を手書きで準備するのは、書き間違えも許されず、項目が多いと非常に骨が折れる作業でした。また、認知症で文字を書けない方や視力の低下で文字を書きにくい方などの場合でも、代筆は許されませんでした。こうした状況をふまえ、2018年に成立した改正相続法により、2019年1月13日より財産目録のパソコン作成が認められるようになりました。あわせて、文字を書けない方の場合、財産目録のみ代筆、財産目録の代わりに「不動産全部事項証明書(登記簿謄本)」や「通帳のコピー」などを添付する方法も認められるようになりました。
ただし、こうした自筆での手書き以外の作成方法が認められたのは財産目録だけです。
その他の部分はすべて自筆で書く必要があります。
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- 3.録音テープ・録画は不可
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ICレコーダに録音することやビデオなどで録画するのもNGです。遺言書という言葉通り、自らの遺志は書面かつ自筆で残す必要があります。
遺言書は具体的かつ正確に書きましょう。遺言書を書く際、無理して法律的な専門用語を使う必要はありません。読む人が混乱しないよう具体的かつ正確に書きましょう。曖昧な表現や間違った記載により、相続人の無用な争いが起こることもあります。そのために、
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- ①所有財産を改めて確認すること(財産の棚卸)
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所有していた財産の中で、何年も前に他人に譲っていたりしていたものがないかを再確認しましょう。実際にないものを遺言書の中に列挙してしまうと、相続人を混乱させるだけでなく、争いの火種になる恐れがあります。
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- ②誰にどの財産を譲るかを明確にする(割合を間違えると遺留分侵害の恐れも)
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長男は献身的に介護をしてくれたので”多め”に財産を譲る」など、譲渡する財産の金額や量をあいまいに書くのもしてはならないことです。相続人が話し合って円満に解決できればよいですが、「多め」と書くと、相続人の中で解釈が分かれて「争族」のもとになりかねません。
自筆証書遺言は自分ひとりで気軽に書くことができますが、どう書けばよいか分からず、有効な遺言書となっているか不明確な部分もあります。そのため、確実な手段を選ぶのであれば、時間と費用がかかっても、「公正証書遺言」を選択するのがよいでしょう。次回は、その「公正証書遺言」の作成手順についてお話いたします。