第109回みなし相続財産に関する事例放送日:2020.05.28

  • 登場人物:父(死亡)、母、長男、長女、次女(質問者)
    財産内訳:預貯金6,000万円、自宅3,000万円、死亡保険金4,000万円
  • Q.
    先日、父が亡くなりました。遺族は、母と兄、姉、二女である私の4人です。
    姉は父との間に確執があり長らく両親と連絡をとっておらず、今回の相続について放棄したいと言っています
    父の遺産には、預貯金が6,000万円と自宅としての不動産3,000万円があり、その他には死亡保険金4,000万円を受け取ることになっています。
    預貯金と不動産については、母がすべて相続することになりそうです。
    なお、受け取る予定の死亡保険金の内訳は以下のとおりです。

    A社生命 死亡保険金2,000万円 契約者:父 被保険者:父 受取人:母
    B社生命 死亡保険金1,000万円 契約者:父 被保険者:父 受取人:兄
    C社生命 死亡保険金1,000万円 契約者:父 被保険者:父 受取人:姉

    死亡保険金には相続税がかからないという話を聞いたことがありますが、今回のケースではどうでしょうか。
    また、姉は死亡保険金の受け取りも拒否していますが、相続税の申告はしなくてもいいのでしょうか。
  • A.
    死亡保険金は、預金や不動産などのように亡くなった人が保有していた財産とは異なり、その受取人となっている人固有の財産と考えられます。そのため、相続財産とは異なるものです。
    しかし死亡保険金は、その被保険者の死亡によって受給する権利が発生するため、所得税ではなく相続税の課税対象となる金額に含まれることとされています。そのため、死亡保険金のことを「みなし相続財産」と呼びます。
    死亡保険金を受け取った場合にかかる相続税については、「500万円×相続人の数」で計算される非課税額があるため、今回のケースでは2,000万円(500万円×4人)が非課税額となります。

    また、お姉さまの件については仮に相続放棄をしたとしても、死亡保険金の受け取りができなくなることはありません。それは、死亡保険金は受取人固有の財産であるため、相続財産の放棄とは関係ないためです。
    しかし、受取人となっている人が別の人に受取人を変更するという意思表示をせずに、単に受け取りを拒否してしまうと、その保険金を他の相続人の方も含めて受け取ることができなくなると考えられます。
    なお、相続放棄をしても死亡保険金の受け取りはできるため、実務的にはそのようなケースも多くあります。その場合、相続放棄した人にも相続税が発生することがあります。相続放棄した人については、
    (イ)基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)の計算をする際に相続人の数に含まれること、
    (ロ)死亡保険金の非課税額(500万円×相続人の数)の計算をする際に相続人の数に含まれること、
    (ハ)個別の相続税額を計算する際には死亡保険金の非課税額の計算対象とならないことに注意する必要があります。